カロリーヌは、夫の遠い親戚の女性。

夫の親の主催するパーティで、何度か会ったことがある。シックな装いの女性だなあと思っていたのだが。
一度、彼女の家に食事をお呼ばれして、ぶっとんだ。
トロカデロ広場の、400㎡は軽くある、豪華なアパルトマン。
気の遠くなるくらい、広くて、きらびやかなサロン。
3人いる子供たちのそれぞれの部屋には、浴室・トイレがついている。
住み込みのお手伝いさんが一人と、ベビーシッターがひとり。

「子供がなかなかできなくて、以前はちょっとブルーだったの。でも、今は3人いて、とても幸せ」
カロリーヌは、ルイ15世風の椅子に座って、優雅に微笑んでいた。

それから、1年たって、カロリーヌが妊娠したという知らせを受け取った。私は漠然と、あのアパルトマンには、ホテルのような子供部屋がもうひとつ増えて、ベビーシッターは2人になるのだろうなあと、考えた。

その後、赤ちゃん誕生の知らせ。そして、その数ヵ月後。
「カロリーヌが、乳がんなの。それも、進行がとても速くて・・」
夫の母からの知らせに、私は立ちすくむと同時に、幸と不幸のバランスについて、一瞬考えた。そして、その考えを、すぐに消した。

手術、化学療法などを経て、彼女は「まだ、生存している」。
周りの人たちからの話だと、まさに、「まだ、生存している」という言い方がぴったりの様子だ。

4人の子供のお母さんのカロリーヌ。
頼むから、死んでくれるなと、私は思う。
あなたは確かに恵まれていたけれど、だからといって、命を失う筋合いはないんだから。

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