絹のように柔らかいだぶだぶの上っ張りを着せられ、湯気が立ちこめる中、椅子に座って窮屈極まりない思いをしている。まず初めに床屋は、小さな保護タオルを巻くために、指を首の周りに滑らせた―― その瞬間から、彼の絶大なる職権と心配りのために、そして店に置いてあるスミレと羊歯が放つ強い香りのために感覚が麻痺し、されるがままとなった。

 床屋から背中越しに話かけられて、その姿を鏡越しに目で追うのは、あまり礼儀正しくないし、彼を少々苛立たせてしまう―― 彼は何も言わないが、両手で頭のこめかみの辺りをはさみ、容赦ない穏やかさをもって、その位置を直す。それから、再び櫛とはさみのバレエが始まり、短い沈黙の後、会話も再開する。これはなかなか不思議な感じだ。鏡の中の相手と正面から向かい合っておしゃべりをしているのだ。本当にお互いの姿を見ているとも言えないし、敬服し合っているとも言えない―― もっとも、こんなうぬぼれ屋と、そのうぬぼれ屋の耳の周りで働きバチさながらの技を披露するこの職人を対置させること自体が、ぶしつけというものだろう。お互い、自分を見ずに、相手を見て、やがて会話に没頭するようになる。話題は大抵、当たり障りがなく、広い意見の一致がみられる教訓的なものだ。たとえば、サッカーにおけるディフェンスの発達について―― 「仕方のないことですよ、金が物を言うんです」

 しかし、肝心なのは一番最後だ。床屋の動きが緩慢になる。ナイロンの上っ張りから客を解放すると、有能な鞭打つ調教師のごとく、彼はその上っ張りを一振りする。柔らかいブラシで余分な毛を払い落とす。そして、ついに恐るべき瞬間。棚に近づいた床屋は鏡をつかむと、すばやく、ぎこちなく、三つの位置で動きを止める。首筋、左斜め後ろ、右斜め後ろ。そこで突然、被害の大きさを知ることに… そう、たとえ、ほぼ注文通りになっているとしても、実はもっと短くするつもりだったとしても、散髪したての髪型がどれほど間抜けに見えるかということを、毎回忘れてしまっているからだ。しかもこの災難を、ささやくような小声の「ウィ、ウィ」とう返事で受け入れなければならない。満足そうにまばたいたり、うなずいたり、時には「完璧だ」などと言って余計辛い思いをして、苦しい同意を偽善的に表さなければならない。料金はそのために払うようなものだ。

フィリップ・ドレルム『台無しになった、午後の休息』(LA SIESTE ASSASSINEE)より
t.p.訳

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索