フランス語のプライヴェート・レッスンが終わる頃に、次女を迎えにいくと…
「マダム、お嬢さんの想像力は、素晴らしいですね!」
ムッシュLが、頬を紅潮させて、愛しげに次女を見ている。
「は?」(なんとなく悪い予感)
「枯葉のお姫様の話を、沢山してくれましたよ!」
 そう言えばさっき、公園で、熱心に枯葉を拾ってたな…
「それで、今日のお勉強は、いかがでした?」
「えー、動詞のコンジュゲゾン(活用)を、ひとつと、いくつかのボキャブラリーについて、取り組みました」
 ノートを見ると、単語が5個くらい…
「それだけですか!!」

 私は次女をギロリと睨みつけるが、彼女はどこ吹く風。

 先生に馴染んできたと思ったら、もうこれだ。あなたのちっさい頭で考えるてることなんか、お母さんは、お見通しですよ?

 彼女は、フランス人の男を骨抜きにする術を心得ている。意識的にか、無意識的にか、無垢な少女になって、自分の想像の世界に、相手を引きずりこむのだ。そのテクニックは、動詞の活用を覚えたくないとき、綴りの書き取りをしたくないときなどに、遺憾なく発揮される。父親はいつもこの手にひっかかり、メロメロになって、勉強にならない。だから、こーして、高い料金(1時間5千円だぜ?)払って、プロの先生に習いにきているというのに!

「おしゃべりも結構ですけど、お勉強のほうも、シリアスにお願いしますねっ!」
 私は、むっとして、次女の手を引っ張って、教室を出た。
 私の不機嫌さを察していた次女は、しばらく歩くと、空を指し、
「おかあさん!ほら!とっても、可愛い三日月さんが出ているよ」
 あたしにその、かわいこぶりっ子は通用しないからね!と、思いながら、空を見上げると、小さくてきれいな形の三日月が、遠くの夜空にくっきりと浮かんでいる。
「三日月さん、お顔が描いてあるみたい…。よーくみると、お月様の見えないところの、まあるいところが、うっすら見えてくるよ…」
 確かに、太陽光に照らされていない部分も輪郭を残している。小さく見える月だけに、けなげな感じ。
「ほんどだ。可愛い○○ちゃんの見つけてくれた月は、可愛いお月様だわ」
あっ、いけない!あたしまでこんなこと言って、どーする!?

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