「お子さんの歯磨き、たまにお母さんが仕上げしてくださいね」
と言われていた…ことを思い出した、歯医者への道すがら、
「ねえ、ちゃんと、歯、磨いてた?」
と訊ねたら、
「うん!歯茎が痛くなるほど、歯茎と歯の間をきれいにしてた」。
よしよし。

歯医者にて。
「上手に磨けていますよ!歯茎の腫れもなくなりました」
とのお言葉。
でも、冷たいものがしみるのは相変わらずなので、より強力なコーティングをした。


歯医者の待合室で。
診察を終えたおばあさんが、ヘルパーさんらしき人に支えられ、杖をついてよろよろと玄関に到着…したところで、尻もちをつくかたちで転んでしまった。
おばあさんは、何とか立ち上がろうとするが、立ち上がれない。ヘルパーさんは、なぜかヘルプしない。見かねた私が、
「何かお手伝いしましょうか?」
と声をかけたが、
「いいんです」
と、ヘルパーさんは断る。
「ごめんなさねー、わたし、こんなに太っちゃってるからねー」
と、おばあさんが恐縮した(確かに彼女は、自分の足と腕で起き上がるのは困難なほど太っていた…)。
席に戻ると、カデットが、
「お母さん、傘立て!」
と、私を肘でつついた。確かに、そのまま、おばあさんが立ち上がったら、激突しそうな位置に傘立てがあった。ので、私は傘立てをどけに行った。ヘルパーさんは、どうせ転んで横になったのだからと、おばあさんのスリッパを脱がせて、靴をはかせていた。靴をはいたおばあさんがそのまま歩いたら、玄関に所狭しと並べられている靴に足がもつれそう…と、思ったら、カデットがやってきて、玄関の靴をわきにどけ始めた。私は、おばあさんとヘルパーさんのスリッパを滅菌ボックスとやらに入れて片づけた。

長い時間をかけて、おばあさんはやっと立ち上がることができた。扉の向こうの、少し離れたところにある車いすをこちらに近づけようかと私は提案したが、やはりヘルパーさんに断られた。ふたりは、時間をかけて、扉の向こうへ出て行った。

「お母さん、なんでおばあさんと一緒にいた人、おばあさんを助けてあげないんだろう?ひどいよね?」
と、カデットは言った。
「うーん。ひどいかもしれない。でも、なるべく助けないで、おばあさんに自分の力を発揮してもらおうという考えがあるのかもしれない」
と、私は答えた。

それにしても、この歯科医院の美人受付嬢が、この光景を黙ってみているのも妙な感じがした。支払いが終われば、その後のことはわれ関せずといった感じ。彼女もおばあさんの自立を応援しているのかなあ?

とはいえ、スリッパのはきかえ、微妙に段差のある狭い玄関、立って履き替えられない人のための移動式の小さなベンチ、そのベンチの前にある傘立て…。あらゆるものが、おばあさんにとっては障害物だった。バリアフリーには程遠い。ヒューマニティあふれるホームページが、嘘っぽくて、安っぽく感じられる。

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